1)社会保障における介護の位置づけ
09年予定の基礎年金国庫負担割合の引き上げ含む。そのほか、労働力人口の減少を補う施策の実施など。全要素生産性の上昇が1%程度と仮定。
高齢者数がピークに達する2025年のわが国の介護給付額は、一連の諸改革が成功した場合でも17兆円に達するとされています。この給付額を1兆円以上軽減する方法があるとすれば、いかがでしょうか? ポイントは、介護保険制度と矛盾せずに、ボランティアを活用した福祉システムを構築する、ということです。「修正タイムダラー制」は、この目的を果たすために検討されているシステムです。
2)修正タイムダラー制
それぞれの地域において、年齢、体力など様々な民間住民により、下記の中心概念に基づき組織(時間預託管理団体)を創設します。
【中心概念】
団体の会員は、自分が行った介護福祉サービスと同種同量のサービスに対する被介護者としての請求権を獲得できること。
〈解説例〉介護サービスを必要とする会員(Aさん)とサービスを提供する会員(Bさん)との間で、BさんがAさんの介護を1週間に2回、2時間ずつ行ったとすると、Bさんは管理団体に4時間(2時間×2)を預託したことになり、その後Bさんが介護を必要としたときに、当該団体の別のメンバーから4時間分の同種の介護サービスを返してもらえる権利を持つということです。
ケース1:サービス受給者Cさんは時間預託の残高がない
この場合、Cさんは管理団体が設定した時間あたりのサービス単価(全国で統一するのが望ましい)にサービスの受給時間数を乗じた金額を管理団体に支弁することで介護サービスを受けることができます。Cさんにサービスを提供するのがDさんであるとすると、管理団体はDさんの将来の給付要求に対する担保として、この支弁により基金を創設し管理します。また、この基金の運用はしないこととします。
ケース2: サービス受給者Eさんは時間預託の残高がある
この場合、Eさんは過去に貯めておいた自分のポイントと引き換えに「無料」で介護サービスを受けることができます。
修正タイムダラー制の要点は、福祉サービスを対象に1ポイントを1,000円として換算し、当該サービス提供者の名義で積み立てられ、自由に引き出せるようにすることです。引き出しは原則、介護または介助のサービスとして、他の会員によって提供されるサービスを受け取ります。
- ポイントは配偶者、親、兄弟、子供のために使用可ですが相続は不可
- 基金は当該団体の財産として計上
介護サービス供給量の増加について
がんばる地方応援プログラムにも、地域の介護、子育て力を高めることはポイントとなる。
「自分のために積み立てる、自分に還ってくる介護」
(ボランティア活動のインセンティブを拡大)
- ア)若者への就労支援として活用【ニート、フリーター参加の促進】
- 修正タイムダラー制は、若者の就労機会を拡大する施策としても活用できます。例えば、制度として力の強い若い人も必要ですので、若年者の(サービス提供)会員には特典を与えることも考えられます。具体的には、40歳になるまで、ポイントを単価1,000円として現金で引き出すことを認め、所得税を免除する特別措置等を実施します。当然のことながら、若者参加の増加は、修正タイムダラー制による介護サービス供給の増加につながります。
- イ)介護保険からの給付可能
- 修正タイムダラー制におけるサービスと介護保険における現行のサービスの内容に差がない場合、利用者の希望により、前者の利用に介護保険からの給付を認めることとします。ただし、積み立てられたポイントを介護保険の保険料に充当することはできません。介護保険からの給付を認めることで既存事業者と新規NPO団体の間に適切な競争がもたらされ、サービス水準の向上が期待できます。(後述)
- ウ)時間あたりのサービス単価水準は全国統一で決定
- 公的介護保険によって報酬単価が規定されている同種のサービスと比較して、より安価であれば、修正タイムダラー制のサービスに対する利用者の需要は大きくなります。例えば、内容に遜色のないサービスが利用可能である場合、本モデルの設定水準では介護保険からの給付を受け、時間を倍にして使うことも可能となります。
全国規模で管理団体を立ち上げネットワーク化
自治体単位で補助金を投入
次に、当該団体を立ち上げ、全国ネットワーク化するために、法律は時限立法で5年間有効とし、補助金は申請を行った自治体に対し3年間のみ給付します。当該自治体の職員(人件費は自治体負担)はNPO方式に準じて運営し、設立後3?4年で軌道に乗せ、その後はNPOとして独立し、自治体とは分離します。
NPOになってからは補助金は必要ない。自治体に対する寄付は問題ない。
NPO組織図
- 【補助金の目安】
- 人口3万人未満の市町村は、人口1万人あたり1000万円
- 人口3万?5万人未満の市町は、人口1万人あたり800万円
- 人口5万?10万人未満の市町は、人口1万人あたり600万円
- 人口10万?20万人未満の市は、人口1万人あたり500万円
- 人口20万人以上の市は、人口1万人あたり300万円
*政令指定都市は除く。また、立ち上げから寄付金の提供を受けられるよう認定し、かつ寄付金の所得控除、または税額控除は初年度から認める特区または特例をつくるものとする。
- 【修正タイムダラー制の特質】
- 自治体には不強制
- NPOの必要経費を捻出するため、サービス受給者は入会時1万円と年会費1万円を支払い、サービス提供会員は毎月1,000円支払う
- NPOを全国でネットワーク化(例えば、東京でポイントを貯めた人が九州の故郷に帰った場合、親の介護のためにも使用可)
- 身体介護に携わるには、ホームヘルパー2級以上の資格を義務付け
- 介護サービス提供中の万一の事故などに備え、会員は民間保険に加入
- 定常状態(サービス受給者とサービス提供者のバランスが取れる状態)では、その参加人数の規模の中で介護は「ほぼ無料」に
適切な競争促進により福祉サービスの質を向上させ、
介護関連給付費を削減
- 民間の企業による介護*
- 社会福祉協議会に代表される官による介護*
- ボランティアが行う、いわば公による介護(介護保険の2倍のサービス利用可)
*は既存の事業者
この3者間の競争が介護の質を保持し、価額の高騰を防ぎます。
別紙の基準で、全1,804(平成19年3月末)の自治体が補助金申請した場合の国の負担額は、年間約720億円、3年間では2,100億円あまりと試算しています。
修正タイムダラー制の効果(厚生労働省の協力により推計)
団塊の世代以降の人たちが定年後、男性の3割、女性の4割が修正タイムダラー制に参加し、平均10年で4,000時間貯めた場合、そのすべてが身体介護であるとするとタイムダラー制の効果は年間約1.7兆円、10年間で17兆円。そのすべてが生活支援であったとしても年間8,800億円、10年間で8.8兆円にも上ることが分かりました。
3)応用例社会保障における介護の位置づけ
修正タイムダラー制は、子育て支援に活用することも可能です。子育て支援の希望者の人数を考慮するなどして、例えば、1時間の子育て支援を0.5ポイントに換算して時間預託とすることで、容易に修正タイムダラー制を活用できます。(ただし、その際に、NPO団体の構成員の一部には、保育士、認定ベビーシッター、幼稚園教諭免許などの資格を義務付ける必要があります。)
このように、適切なポイントの設定を行うことで、修正タイムダラー制は地域コミュニティの再構築のため福祉全般へ拡張できます。
今後の方向付けとして、参加ボランティアを募集し、モデル地区から少しずつ拡げていき、長期的に実証研究を深めていく必要があります。